草刈りに補助金? “縁の下の力持ち” 多面的機能支払交付金(農村を支える秘密兵器・第2回)

農村振興(ソフト)

はじめに

「草刈りに補助金が出るって本当?」
初めて耳にする人は驚くかもしれません。けれど、これは国が正式に用意している制度です。

農業は食料をつくるだけではありません。田んぼや畑は大雨のときに水をためて洪水を防ぎ、畦(あぜ)は土砂崩れを防止し、水路やため池は生き物のすみかにもなる。農村の祭りや景観は文化を支えています。こうした“副産物的なはたらき”を農業・農村の多面的機能と呼びます。

この多面的機能を守るために設けられたのが、多面的機能支払交付金(略して多面)です。


多面的機能支払交付金とは?

多面は、地域の農業者や住民が集落協定を結び、協力して行う活動に対して交付金を支給する制度です。

活動の例

  • 水路や農道の草刈り・泥上げ
  • 農道やため池の補修
  • 景観形成や植栽活動
  • 農地や土地改良施設の維持管理

これらの作業は普段目立ちませんが、農村を維持するための「縁の下の力持ち」です。

👉 詳しくはこちら:農林水産省 多面的機能支払


集落協定がカギ

制度を利用するには、必ず集落協定を結ぶ必要があります。
これは「誰が何をするのか」「お金をどう使うのか」を地域で話し合い、協力体制を整えるための仕組みです。

この協定を通じて、農家だけでなく地域住民も参加可能となり、交付金は参加者の日当や資材費にも使うことができます。農家以外の人も「農村を守る一員」として活動できる点が、多面の特徴です。


多面と中山間の違い

どっちがどっち?ってなるのが中山間地域等直接支払交付金(略して中山間)です。事業での活動が似ているからです。その違いをざっくり説明します。

  • 多面は、農村を守るために施設や環境の維持管理活動に補助金が出る制度。
  • 中山間は、条件不利な地域で営農を続けることそのものに価値を認め、補助金が出る制度。

つまり、

  • 多面は「農村インフラを守る」制度
  • 中山間は「営農継続を守る」制度

両者は支援の軸が異なりますが、いずれも「地域が持続できるようにする」ために欠かせない仕組みです。


まとめ

「草刈りに補助金」と聞くとなんだか変に思えるかもしれません。
でも、その草刈りや泥上げがあるからこそ、水害を防ぎ、景観を保ち、農村が暮らしの場として続いていけるのです。

多面的機能支払交付金は、農村の縁の下の力持ちを支える制度。
地域の暮らしを陰から守る、この制度の意義をぜひ知っていただきたいと思います。


👉 次回は「“やめないこと”に価値をつける制度、中山間直払」について紹介します。

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